2011年01月27日

発達障害の社会生活上での困難さは仕事・学校・家庭と多岐にわたる。いずれも支援の網から「すり抜けて」しまい社会的な圧力だけがどんどん当事者に掛かっている状態だ。

イイトコサガシ主催にして開催された東京の発達障害者シンポジウムはUstreamにより上映されアメリカからも視聴することが出来た。

内容は下記にまとめてある。

第1部 http://togetter.com/li/92230 第2部 http://togetter.com/li/92482

ここでは第一部について紹介したい。

第一部概要

講演者について

第一部の講演者、高森は「漂流する発達障害の若者たち」の著者である。 その著作は花風社の浅見社長も絶賛したほどの内容である。 その特色は発達障害そのもの説明・解説を抑え、そのような人たちの社会生活で生じる困難およびそれに対応する社会対応提言が主である。

発達障害と社会性に興味を持った理由。

もともと発達障害活動を行っており、そこに来る発達障害者たちが発達障害としての支援を受けていたわけでもその他の障害者としての支援も受けていたわけでもなかったことに気が付いた事。また、歴史の中に記録に残らない人たちの歴史にも興味があった事。そこから転じて障害者支援に引っかかってこないような障害者もいるはずだと思った。何らかの障害の診断は付く。ただし、発達障害等目に見えにくい障害を持っている。そう言う人たちの事をグレーゾーンと定義した。彼らは労働と福祉の狭間に落ち込み、支援にも福祉にもつながらない事が多い。この発達障害は日本では21世紀になってから本格的に支援が始まりこれから支援が始まろうとしている。だから、それ以前には大量の支援を受けられなかった当事者がいることになる。

発達障害とは

たとえば、

(1)学力は高いんだけれどコミュニケーションに難があったり

(2)話は流暢なんだけれども計算が苦手だったり
簡単に言うと「アンバランス」。

知的障害とは

人口の2.27%が知的障害と言われているが、厚生労働省による50万人くらいしかいない。
普通学級にも2%程度の知的障害児がいるようだが、発達障害と紛らわしいこともあり、支援の対象になっていない。たが、これらの隠れ知的障害者は社会福祉から漏れているために、貧困問題等でかなり不利益が集中している。

精神障害者について

平成11年から21年までの間の統計で、通院治療の精神障害者が増大していた。彼らは福祉や社会保障のサポートが希薄。労働と福祉の宙吊り状態になっている。

発達障害者の社会福祉について

派遣村で有名な湯浅さんの調査によると、仕事を失い家を失い、しかし社会福祉にありつけない発達障害者がいることが分かった。発達障害においては、「なんとなく仕事を転々としている」と言う人が多い。発達障害が職場で苦労している点として「人間関係が不器用である」「仕事を覚えるのに時間がかかる」これらの理由から職場で孤立したりクビになりやすい。これらの結果、労働市場で歓迎されず、何度も転職を繰り替えすことになる。また、労働市場に出る自信が無い。一回は出たのだけれど、打ちのめされてしまったという人も多い。2008年に横浜市のアンケート。企業の83.3%はニートや失業状態にある若者は雇用する気が無い。つまり受け皿がないのに、「働け」という圧力だけがどんどん掛かる。これが発達障害等グレーゾーンにある障害者の置かれている状況。

学校での発達障害

普通学級には目に見えやすい障害者はあまり参加していない。しかし、誰か一人はいじめられ役になることになる。その役割は現在の枠組みは発達障害や軽度知的障害が選ばれる事が多い。ただ、彼らは先生に相談をしても「貴方がみんなとあわせないからイケナイ」のようになって救われず、家に帰っても親からも虐待されるなどという事態で家にも学校にも居場所がない。発達障害者のアンケートでは「普通学級に放り込まれて辛かった」という回答が多かった。仲良くする事を強制されるなどが苦痛だったという意見もあった。
一方、普通学級に存在して有意義だったと言う意見もある。
自閉症で普通学級に進学したモリグチナオミさんの意見。「自分はたくさん勉強したかった。だから、普通学級にいけてたくさん勉強出来て良かった」ただ、いじめにあったりもしたし、また集団訓練の練習ばかりやらされるのが苦痛だった
逆に人間関係では苦しまなかったが、学業で足を引っ張られたケースもある。
その場合には「学習障害」と呼ばれる。ナグモアキヒコ氏の場合には、人間関係は良かったが、勉強が理解できない。4つの学校を転向して、最後は通信制の学校に行って卒業にたどり着いた。彼の場合には合わない学習スタイルで無理に学習。それが結局自分はダメなんだと言う低い自己評価につながり、最終的にバーンアウトした。学びたい事も学べず、有意義な経験をつめないまま義務教育を終えていく、「すり抜けていく」子供が発達障害には多い

家庭における場合

2001年から2006年の愛知での統計によると578人の虐待児中24%が広汎性発達障害 20%がADHD。ただ、虐待の影響でそのような症状が出ているかもしれないので、数字が高めに出ている可能性も有る。女性で家事に苦しむ当事者もいる。DVの被害者になるケースも多い。一度主婦になってしまうと、高賃金の仕事はてにはいりにくくなるため、DVから逃げられない状態がある。

日本では家族福祉への依存度が高いために、家族との関係が悪かった場合には十分な教育・福祉を受けられなくなる。そして、本人が結婚した場合にはその負担が非常に大きくなる

グレーゾーンの障害者は不利益が集中しやすい。彼らに対するセーフティネットを作る事で、発達障害だけでなく、一般のいじめ、孤立、就労等に対する対応につながる。

感想

「発達障害入門」と言うべき内容であり、発達障害について知らない人々への理解の分かりやすさはさすがである。発達障害者の特性。そして、彼らが置かれている状況に付いての的確な分析が光った。個人的に琴線に触れた発言は学校部分における「学びたい事も学べず、有意義な経験をつめないまま義務教育を終えていく、「すり抜けていく」子供が発達障害には多い

これに関しては私も以前に気になった資料があり気になっていた。それは「成功体験」「達成感」である。下図はJリーク選手の誕生月分布である。早く生まれたほうが成功体験が積めるから有利なのだという。4月に極端に偏っている事が分かる。

Jリーク選手の誕生月分布。早く生まれたほうが成功体験が積めるから有利なんだって。想像以上に差があって驚いた。

これは日本に限らない。下図は各国におけるサッカー選手の誕生月が1年を4等分した際にどのクオーターに属するかの表である。http://ow.ly/3kjZn

image

このように成功体験の積み重ねが人間の能力成長にいかに大きな影響を与えているかを考えると、発達障害であるがゆえに成功体験を得る事なく「すり抜けて」しまうことの損失は非常に大きなものとなるのではないだろうか。

最後に、高森氏は湯浅氏とともに行動した事があるため、指摘する事項が湯浅氏と重複している点が多く、主張にオリジナリティが感じられなかった。今回は導入であり氏の本論である具体的な支援内容への言及が非常に乏しかったことが理由であろう。今回のシンポジウムにおいて「発達障害って何?」というレベルの人は少なかったであろうから、導入部分を削って支援内容への言及が欲しかった。

今回の講演は「気付き」を与える点で非常に良いセミナーであった、受講者たちも「ふーん」で終わらずに「では、どうすれば良いのだろうか」にまで踏み込んで考えて見て欲しいと思う。私の考えに付いては後日執筆予定の第2部の感想で述べたいと思う。

posted by hati at 09:43 | Comment(0) | 雑記 はてなブックマーク - 発達障害の社会生活上での困難さは仕事・学校・家庭と多岐にわたる。いずれも支援の網から「すり抜けて」しまい社会的な圧力だけがどんどん当事者に掛かっている状態だ。
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